校長祝辞
「卒業する君たちへ」
大野校長より、2024年度卒業生に贈られた言葉
大野校長より、2024年度卒業生に贈られた言葉
卒業する君たちへ
6年生の皆さん、ご家族の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
君たち6年生が入学した年、私は1年生の担任として皆さんを迎えました。初めての場所で不安そうにしていた君たち、まだ小さかった君たち、お母さんに会いたくなって泣いていた君たち、1年生の合宿では夜になると“おうちに帰りたい”と何人もがホームシックになり、それが伝染病のように広まり当時担任だった私はどうしたらいいか途方に暮れていました。
1年生の最後、突然のコロナによる休校で6年生と涙のお別れをしました。
2年生のスタートは6月でした。
この間、皆さんから送られてくる写真や動画を通信として配信していた時は、何とも言えないもどかしさを感じていました。
2年総合のパン作りは、小麦粉や卵、ドライイーストなどがアレルギーの関係で使えず、米粉パンに挑戦しました。はじめはせんべいのようになってしまい、本当にパンができるのかと不安になりました。
はじめての劇の会、1組は「百人のお父さん」2組は「ばけものつかい」でした。緊張しながらもみんなが演じることをとても楽しんでいたこと、忘れられません。コロナ禍で透明のガラス版越しに演じていたことを覚えています。
この6年間、君たちのそばで君たちの成長を見守ることができた時間は本当に幸せでした。
6年生となり、大きく成長した君たち、最後の一年で最上級生として素敵な姿をたくさん見せてくれました。
不安そうな1年生に声をかけ、手を繋いで入場した君たちは頼もしい姿でした。
運動会でのリーダー学年として下の学年を引っ張っていく姿も忘れられません。どちらが勝ってもおかしくないような接戦でしたが、結果は2組の久しぶりの優勝でした。
閉会式でのチームリーダー1組のSさんの「気持ち的には負けていません」は印象深い言葉です。
一生懸命に取り組んできたことは、点数や勝ち負けでは測れないものを築いてきたのだということを自分の言葉で届けてくれたのだと思います。
沖縄学習旅行での真摯に学びに向かう姿も忘れられません。講師の方の話の後、質問が次々と出てきて、すごいなあと思いました。
中でもIさんの「真の平和って何だと思いますか?」は心に残る言葉です。ガイドをしてくれたN先生にIさんは聞きます。
「不安がないこと、憲法9条が守られること」とN先生は応えます。さらにN先生は「あなたはどう考えるの?」という問いを返したのに対してIさんは少し考えてから「私が考える真の平和は、戦争がないはもちろんだし核兵器がないももちろんだけど、人権が守られていること、食べること、寝ること、トイレにいくことが普通にできること」と応えていました。
「真の平和って何だと思いますか?」という問いを大人に聞くことができること自体、すごいことだなと思いましたが、「自分はこう考える」を堂々と言える姿に心が震えました。
この問いは、その後クラスの中でも話し合われたとのことですが、皆さんがどのような答えを考えたのか、とても興味があります。正解はありませんが、この問いは、大人も含めたここにいるすべての人が問い続ける疑問だと思います。ウクライナやガザでの戦争が続き、人を見た目や国籍、性別、考え方で差別することが日常的に起きている今の社会・世界の中で私たち自身が問われているのではないでしょうか?
真の平和とは何なのでしょうか?どうしたら真の平和は実現するのでしょうか?皆さんはどう考えますか?
劇の会の姿もさすが6年生と思わせる姿を見せてくれました。
1組は「戦争を知らない子どもたち」。おじいさんになった「健太」が「由希」に向けた手紙の中で「大きな力に流されて、真実を見ることのできなかった愚かさを次の世に伝えていかねばならない。このとてつもなく大きな犠牲を払って知り得たことを、私たちは決して忘れてはならない。私は、生きて世界中を 戦争を知らない子どもたちの笑いであふれさせたい。
「由希」の子どもも、そのまた子どもも戦争を知らない子どもであり続けるために、私は二度と、弱虫健太には戻らないことをここに誓おう。」と言っています。ここに君たちの想いが込められているように私は受け止めました。
2組は「バンナナと殿様」。1組とは対照的におもしろく何度も大笑いしてしまう劇でした。A君とK君たちのコミカルな挨拶、素直になれない殿様に振り回される家来たち、本番で思わずバナナを食べてしまった殿様J君、プロのような軽快な弁士K君の語り、自分たちで考え創っていった演技が随所にちりばめられ、演じている君たち自身が楽しんでいるのが、伝わってきました。
私の立場からこの場でこのような言葉はふさわしくないとは思いますが、まだまだ卒業してほしくない、というのが率直な思いです。君たちがいなくなった学校を想像することができません。君たちの成長の姿をまだまだ身近なところで見ていたいというのが素直な思いです。でも、卒業です。新たな世界へのスタートを喜びたいと思います。
6年生のご家族の皆さん、あらためてご卒業おめでとうございます。
今日まで学校を信頼し子どもたちの成長を願いながら様々な協力をしていただいたこと、支えていただいたこと、感謝しております。ありがとうございます。コロナ禍を経る中で、より人と人との関わりの大事さを実感できました。制限がある中で、いろいろな思いがあったと思いますが、運動会や秋まつりなどの行事、日常の教育活動など、学校を信頼していただきご協力いただいたこと、本当にありがとうございました。
昨年行われたバザーの中心を担ってくれたのも6年生の親御さん達でした。子ども達の成長を願い、見守っていきたいという思いはここにいる教職員みんなの気持ちです。親御さんたちにとっても和光鶴川小学校は“ふるさと”のような学校だと思っております。今後とも、和光鶴川小学校を見守ってくだされば幸いです。
さて6年生の皆さん。今日、みなさんは鶴小を卒業します。迷ったり、不安になったり、壁にぶつかったりすることもあるでしょう。もちろんうれしいこと、楽しかったこと、何もなくても、いつでも鶴小に足を運んでください。鶴小はみなさんのふるさとです。それぞれ道は違うかもしれませんが、ここで学んだこと、経験したことを“糧”としながら新しい道を進んでいってください。
自分らしさを大切に、時には周りに助けてもらいながら、歩んでいってください!卒業おめでとう!
2025年3月17日 和光鶴川小学校 校長 大野裕一